地震と酷暑が教えてくれたこと

暑さの厳しかった令和7年の夏もようやく終わり、秋の気配が感じられるようになりました。10月6日、今年初めて柿を収穫しました。仏壇にお供えし、近所の方々にもお裾分けしました。今年は収穫量が少なく、「裏作(うらさく)」の年かもしれません。

能登半島地震から1年10か月が経ちました。被害の大きかった高岡市伏木地区では、建物の解体が進み、街の中に空き地が目立つようになっています。ただし、それらの空き地の多くは土ではなく「砂地」であり、土地利用にも課題が残ります。港町である伏木において、今後人々が再び海岸線近くの地域に戻るかどうかは、大きな問題です。

避難場所にも課題があります。伏木地区の指定避難所は、海岸線近くにある「伏木共同防災センター」です。しかし、地震時にそこへ車で避難するのは、津波の危険を考えると現実的ではありません。実際、今回の地震では多くの住民が山手にある総合病院の駐車場へ避難しました。

旧市街地では、住宅が壁を接するように密集して建てられています。そのため、一軒を解体すると、隣家の壁がむき出しになるケースが多く見られます。本来であれば、それぞれの家が自分の壁を修理するのが原則ですが、解体した側が両隣の壁を修理した事例もあったようです。こうしたケースは法律で明確に解決できないこともあり、今後の課題といえるでしょう。

また、富山市内ではガラス張りでデザイン性の高いビルが地震で被害を受けました。ようやく改修工事が始まりましたが、多額の予算と長い期間を要しています。「災害の少ない県・富山」という神話が崩れた今、このような建物のあり方には再考の余地があります。また、このビルは夏冬の空調費も相当かかっていたと考えられ、ランニングコストの面からも見直しが必要です。

これからは以下のような観点を重視すべきと考えます。

  • 災害に強い構造
  • エネルギー効率の良さ
  • 維持費の少なさ
  • 環境への配慮

鎌倉時代の随筆『徒然草』には「家のつくりやうは、夏を旨とすべし」と書かれています。これは、「冬の寒さ」よりも「夏の暑さ」に備えて家を建てるべきだ、という意味です。現代においても、この考え方は十分に通用します。

  • 風通しの良い構造
  • 湿度対策
  • 直射日光を避ける設計
  • 効率よくエアコンが効く空間

これからの住宅や公共施設には、見た目のデザイン性以上に「機能性」が求められる時代が来ていると感じます。

能登半島地震と令和7年の酷暑。この2つの「災害」は、私たちの暮らしや建物への考え方を大きく変えるきっかけとなりました。 災害に強く、持続可能で快適な暮らしを支える建物や都市設計のあり方を、今こそ真剣に見直す時ではないでしょうか。