一冊の本

創業者、祖父治作の出生地にある射水市立大島小学校で創立150周年式典が行われ、来賓の一人として参列してきました。今から120年ほど前の話ですが、少年時代の治作はこの小学校の校務員だった父の手伝いをすることがよくありました。そんなある日、治作は図書室で一冊の本と出会います。それは当時の日本ではまだ珍しかったコンクリート建築について書かれたもので、治作はこの本をきっかけにコンクリート建築に興味を持ち、夜の海を照らす灯台の建設技術者となりました。その後、樺太の地で当社の前身「寺﨑組」を創業、そして「寺崎工業」は今年創業100周年を迎えました。

一冊の本が人生を変えました。戦後、治作はそのご縁に感謝して大島小学校に本を毎月寄贈し続けました。そして二代目の父敏夫もその大切な思いを受け継ぎ、本を贈り続けました。治作は母「梅野きよ」の名義で本を寄贈していたため、小学校では「寺崎文庫」ではなく、今でも「梅野文庫」として扱われています。親孝行の心、故郷への感謝、寄贈の継続、どれをとってもなかなか真似できるものではありません。

昨年、一区切りを付けるための寄付をさせていただき、本と図書室の整備充実に充ててもらいました。そして今回、図書室と寄贈した本を見せてもらいました。本には「梅野文庫」のシールが貼られており、大切に管理されていました。いくつになっても図書室は魅力的なところです。私でも読みたい本がたくさんありました。子供たちもいろんな本に興味を持ってくれたら嬉しいです。図書室の入口には、この「梅野文庫」の由来について掲示してありました。一冊の本には人生を変える力があること、そして寺崎グループのことも書いてありました。三代目の私のインタビューと写真もその中にありました。無口で怖かった祖父の違う一面、優しい温かさを感じました。私は有り難さと責任の重さをひしひしと感じた次第です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です